約 1,132,203 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1425.html
ザ・サン…もとい頭を光らせながらコルベールが何やら疲れきった様子でプロシュートに近付いてきた。 「君に言われたとおり、樽五本分のガソリンの精製が今、終わったところだよ」 「早いな」 この前ガソリンのサンプルを作ってから数日、それから飛ばせるだけの量を精製する事になったのだが、結構早く出来たのでそれなりに驚いていた。 「それが飛んだ姿を見たくてね…ふふ…ここ数日徹夜続きだったよ」 目の下のくまがスゴイ。 俯き怪しく笑いながら荷台に積んだ樽を浮かしながら運んでいる姿は、なんかもう色んな意味でペリーコロ(危険)さんである。 広場に付きガソリンを入れていると、他の教師からアルビオン宣戦布告を聞いたコルベールがブッ飛んでいた。 「なんですと…!アルビオン軍がタルブ村に!?」 スデに他の教師や生徒達には禁足令が出ているらしい。 「ヤベー状況か?」 「…トリステイン艦隊は司令長官が戦死した上に、残存艦艇も無傷の艦はほとんど無いらしい」 地上戦力も3000対2000で劣っている。 つまり、制空権を抑えられ、蹂躙されるだけという事だ。 「まぁついでだ、あいつに『これ』を見せるっつったからな」 「タ、タルブに行くというのかね!?禁足令が…」 そこまで言って関係無い事に気付いた。 目の前の男は生徒でもなければ貴族でもない。 「ちょ、ちょっと何やってんのよ!」 そこに飛び込んでくるのはルイズだ。 「タルブまで空の散歩だ」 「散歩って…聞いたでしょ!?アルビオン軍が攻めてきたって!!」 「放っといても、そのうちこっちに来んだろーが、それにだ」 「…それに?」 「守んのは性に合わねーんだよ。どうせ相手すんなら打って出た方が早い」 「兄貴の能力じゃここの連中巻き込むしな」 「そういうこった」 必要であれば巻き込むのも躊躇しないが、能力的には敵のド真ん中での能力使用による殲滅が最も適している。 ルイズもグレイトフル・デッドの射程はどのぐらいか聞いていたが、それ以上の射程の大砲でドンパチやっている戦場に行かせる事はできない。 「…こんなのでアルビオン軍に勝てるわけないじゃない!怖くないの…!?死んじゃったらどうするのよ…!!この馬鹿!!」 「怖くねーやつなんていねぇよ。それを上回る『覚悟』を持ってるか持ってねーかってこった。恐怖心を持たないヤツが居たとしたらそいつは、ただの馬鹿だ」 「じゃあ…なんでタルブに行くのよ…!」 泣きそうだが、必死になってこらえる。泣いたところで説教が始まるか、ガン無視されるだけだ。 「言うだろーが、『攻撃は最大の防御』ってな。待ってるだけじゃあ状況が悪くなるだけだ。………こっちだと一応オメーらも仲間なんだからよ」 「あたしとしては『仲間』より『恋人』って言って欲しかったんだけどね」 「な…ッ!何時からそこに居やがった…!」 「おもしろそうな事やってるからさっきからそこに居たんだけど」 よく見るとタバサも隣に居る。 仲間云々の部分はルイズに聞こえない程度の声で言ったつもりだったがしっかりキュルケに聞かれていたらしい。 「ちッ!…時間がねー、オレはもう出るぜ」 「照れなくてもいいじゃない。…あ、でもそんなダーリンも素敵ね」 「レア」 そんなやり取りを見ていたルイズだが、自分も含めて仲間と思っていてくれている事に気付いた。 「…なによ…性に合わないって言ったくせに、結局守るためじゃない」 「ルセーな…あっちに居た時は、オメーらみてーなマンモーニは居ねーんだよ」 ペッシの事はスルーしているが気にしない。 空にペッシが泣き顔で『ひでーや兄貴ィィィ』と言っているような気もしたがこれも無視した。 そう言いながらゼロ戦に乗り込もうとする。 「わ、わたしも、それに乗って行くわ!」 「言っとくが、こいつが墜ちたら死ぬぞ?」 「わたしはあんたのご主人様なのよ!?あんた一人死なせたら…わたしがどうすんのよ!そんなのヤなの!」 ルイズの目をジーっと見る。目は反らさない。 それだけ確認すると、何も言わずゼロ戦に乗り込む。 「な、なによ!こんな時ぐらい言う事聞きなさい!」 しばらくするとゼロ戦の中から破壊音が聞こえ、操縦席から壊れた馬鹿デカイ無線機が放り投げられた。 「ったく…あの時のペッシと同じ目ぇしやがって…言っとくが後ろに席はねーぞ」 組織を離反すると決意した日、マンモーニながら自分達に付いてくると言った弟分と同じような目をしていた。 だからこそペッシと同じようにルイズを連れて行く気になった。 ルイズがゼロ戦に乗り込むと同時に各計器チェック、機銃弾装填確認を行う。 全て良好。旧日本海軍の整備力の高さと固定化の賜物だ。 「ミス・ヴァリエール!…行くな…と言いたいところだが止めても君は行くのだろうから…これだけは言わせて欲しい」 何時に無く真剣な顔のコルベールを見てルイズが操縦席から身を乗り出しそれを見る。 「自分の身を大事にしなさい。わたしから言えるのはそれだけだよ」 「あたし達も『仲間』なんだから付き合うわよ」 キュルケに同意するようにタバサも無言で頷く。 「…ついでだ、纏めて面倒みてやるが、万が一の覚悟ぐらいはてめーでしろよ」 そう言うが、甘くなったなと思う。 イタリアに居た時なら、任務を遂行するためには切り捨てる事も必要だと割り切っていたはずだが ブチャラティの言う事もここに来て分かるような気はしてきた。 「『任務は遂行する』『弟分も守る』『両方』やらなくちゃあならないのが『兄貴』の辛いところ…ってとこか」 「なんか言った?」 「何も言ってねーよ」 「…嘘ね!」 ルイズが後ろで色々五月蝿いがエンジンをかけそれを無視する。 「兄貴、このままだと距離が足りねぇ、前から誰かに風を吹かせてもらわねぇと」 「オメーに分かんのかは理解できねーが…気がきいたな」 「俺は伝説の武器だからよ、ひっついてりゃあ大概の事は分かるさ」 「自分で伝説とか言ってるヤツが一番危ねーんだよ」 「あ、それ結構傷付いた、ヒデーよ兄貴ィ」 「前を見なさい前をーー」 軽口叩きながらコルベールに風を吹かしてくれるように伝える。 風が吹くと同時にブレーキを踏み込みピッチレバーを合わせる。 ブレーキを弱めフルスロットルにすると、勢い良く加速する。 「ぶぶぶぶぶぶ、ぶつかる!」 「舌ぁ噛むぞ黙ってろ!」 後ろでルイズが辞世の句を頭に浮かび上げているが、壁にぶつかる手前で操縦桿を引き上げると、それに合わせゼロ戦も地を離れた。 「素晴らしい…まるで私の信念が形となったようだ…」 このハゲ、ゼロ戦が飛んだ姿を見てどこぞの軍人が乗り移ったご様子で日食の事はすっかり忘れている。 「なにこれ…ホントに飛んでる!」 「しかも、はえーなこいつ、おもしれえ!」 「そりゃあな」 巡航速度程度でも350キロ以上は叩き出せるゼロ戦だ。 フルスロットルなら524キロまで出せる速力を誇る。 当然、キュルケとタバサを乗せたシルフィードは置いていかれている。 「ちょっと、もうあんな先にいかれてるじゃない!もっと速度出ないの!?」 「無理」 (は、速過ぎるのねーー) 二人を乗せている以上出せる速度は決まっているが、乗せていなくても付いていけないである事は今、必死こいて飛んでいるシルフィードが一番よく知っている事だ。 タルブ村に接近するにつれ、村から煙が立ち昇り、ほとんどの家は廃墟と化している。 プロシュート自身、目的の為なら無関係の者を巻き込む事は厭わないタイプだが、この場合は別だ。 明らかに、目的も無いのに破壊行為をしている。 まぁ、それが分かっているからこそ、イラ付きが自分にも向かっているのだが。 「なにこれ…ひどい…」 ルイズが眼下の惨状に目を覆うが、今の自分ではどうする事もできないため、それを見る事しかできない。 「兄貴、一騎来るぜ」 「他はどうしたよ?」 「居るとは思うが…まだ分からん」 その竜騎兵を無視しタルブ村上空を旋回するように飛ぶ。 「ちょっと!なんで何もしないのよ!」 ギャーギャー五月蝿いが無視決め込んでいると、ありえない速度の『竜』に驚いたアルビオン竜騎士隊が全騎囲むようにして、こちらに向かってきていた。 囲みを突破し離脱する形で距離を取ると180°反転し速度を飛行可能速度ギリギリに落すと……群れの中に真正面から『突っ込んだ!』 「な…!なにやってんのよあんたはーーーーッ!反転はともかく減速のわけを言いなさいーーーーーー!!」 「ヤベーって!あいつらのブレスを受けたらこいつでも一瞬で燃え尽きちまうぜ!」 機動と運動性能のみを追求し装甲を全て捨てた機体であるゼロ戦が火竜のブレスを受ければそうなる事は容易に予想できる。 「火竜よりオメーのがあぶねーだろ!」 喚きながら首を絞めようとするルイズをスタンドで阻む。 少しばかり連れてこなけりゃあよかったと思ったが、もう手遅れだ。 「だ、だったら頑張りなさぁぁぁい!こんなとこで死んだら恨んでやるんだから!!」 この状況下で墜とされた場合、両名とも死亡確定なのだがあえて突っ込まない。突っ込んだら負けのような気がする。 「ほほほほ、ほら!かか、囲まれたじゃない!ブ、ブレスがくるわ!」 もうこれ以上無いぐらいルイズがテンパっているが、プロシュートにしてみれば風竜ではなく火竜がブレスを吐くという方が『スゴク良かったッ!!』 「弾は補充が利かねぇからな…このブレスが良いんじゃあねーか! こいつを燃え尽きさせられるぐらいの火力なら、十二分に温まるだろうからよ・・・!」 全騎射程圏内、当然向こうのブレスは届かないがあえて接近した。 「グレイトフル・デッド!」 「ぜ…全滅!?二十騎もの竜騎士がたった三分で…ば、化物か!」 報告を聞いたサー・ジョンストンが喚くが後ろに控えているワルドとしては、この被害は想定済みの事だ。 「やはりガンダールブが出てきましたな」 そんな冷静なワルドを見てプッツンきたのかジョンストンが掴みかかった。 「貴様…!そもそも何故竜騎士隊を預けた貴様がここにいるのだ!臆したか!!」 それを横から見ていたボーウッドが咎めるようにして入ってきたが、矛先がワルドからボーウッドに変わっただけだ。 「何を申すか!竜騎士隊が全滅した責任は貴様にもあるのだぞ!貴様の稚拙な指揮が竜騎士隊の全め…」 喚きながらボーウッドにも掴みかかろうとするが、その途中で言葉が途切れた。 「流れ弾か…ここまで飛んでくるとはな。注意しようではないか子爵」 「ええ、流れ弾ですな」 見るとジョンストンの額に穴が開き、そこから血が吹き出している。 いくら、怪我が魔法で治せるとはいえ、脳に食らえば一発で致命傷だ。 ぬけぬけと言うが、当然流れ弾などではない。 だが、この二人が何もしていない事は回りの船員達が見ている。 「それで、レキシントンの準備は整ったのかね?」 「気付かれないように高度を取りましたので少々手間取りましたが、今終わったようですな」 「偏在か…便利なものだな。しかし、レキシントンを犠牲にする必要があったのかね?」 「私は元魔法衛士隊の隊長ですからな。アンリエッタが出てきている以上、士気は高いでしょうしメイジの比率も多い事はよく知っています」 「士気完全にを打ち砕き、メイジにも止めることができない戦法というわけか… まぁそれはいいとして、全艦に伝達『司令長官戦死。コレヨリ旗艦艦長ガ指揮ヲ執ル』以上」 一方こちらラ・ロシェールに布陣したトリステイン軍だが、ハッキリ言って手詰まりになっていた。 敵はこちらより数が多い三千、おまけに艦隊砲撃の援護付き。 対してこちらは数は二千だが、アンリエッタが陣頭指揮を取っているため士気は高くメイジの数では有利といえた。 「敵艦隊はまだ見えませんが…砲撃に備えて空気の壁で防ぐように手配はしておきました」 国民からはからっきし人気の無いマザリーニではあるが、この男が居なければトリステインなど国として成り立っているかどうか怪しいものだ。 有能だが、周りから評価されていない。どことなく暗殺チームに通じるものがある。 「しかし…砲撃も完全に防げるわけではないでしょうし それを耐えたとしても突撃してくるでしょう。とにかく我々には迎え撃つことしか選択肢はありませんな」 「勝ち目は…ありますか?」 勝算など無い戦いだったが、それをここで言うのは兵の士気にも関わる事だし、それをアンリエッタに言うのも憚られた。 「メイジの数では上回っておりますので…五分五分…といったとこでしょうかな」 そうは言うが実際のところ、上空からの長距離砲撃の前ではそれは意味を成さない。 勝ち目は無いが…やれるところまではやると悲壮な決意をした瞬間、騒がしくなった。 竜騎士が一騎近付いてきたのである。 兵が攻撃を仕掛けるが、風に阻まれる。魔法も同じだ。 そして、竜騎士が近付くと、その正体も分かった。 「…ワルド子爵…裏切り者の貴方が今更何の用がおありですか!」 「ふっ…勇敢な事だな。さすがに兵の士気も高い。お飾りながら国民の人気だけはあるとみえる」 「黙りなさい…!ウェールズ様の仇とらせてもらいます!」 「おお…!恐ろしい、恐ろしい!そんな事をされては返すものも返せなくなります」 「返すもの…?」 「元々は王党派の『物』だったが…必要が無くなったので返しておこうと思いましてな」 「一体何を…!?」 「是非受け取っていただきたい。ウェールズも取り返したいと思っていた物をな」 そう言うとワルドが掻き消え風竜がどこかへ飛んでいく。偏在だったという事だ。 「落ち着きなされ。将が取り乱しては、軍は瞬く間に壊走しますぞ」 そう言われてもアンリエッタの心中では色々な疑念が巻き起こっていた。 返すものとは何か。王党派の物でウェールズも取り返したいと思っていた物… そう考え、空を向くが何かが見えた。 空の大きさから比べれば点のような大きさにすぎなかったが…僅かだが、それが大きくなってきている。 「枢機卿…あれは…?」 そう問われマザリーニも空を見上げる。 瞬間、嫌な予感がした。 そして、その数秒後その予感が的中した事を確信した。 「ア、アルビオンの奴ら…なんという事を…全軍ラ・ロシェールより速やかに離脱!」 「枢機卿…!この後に及んで何を…!」 空を見上げたまま、撤退命令を出したマザリーニに憤りかけるも 顔が尋常じゃなかったので、もう一度空を見上げると、その意味を理解し自身も固まっているマザリーニをユニコーンに乗せ兵と共にラ・ロシェールから逃げる。 「気付いたようだが、もう遅い!」 遥か上空から何か巨大な物がトリステイン軍目掛け落ちてきている。 「『レキシントン』号だッ!!」 落下の微調整を風で行っていたのは当然偏在のワルドだ。 船体にはこれでもかというぐらい火薬が仕込まれている。 それに気付いたトリステイン軍だが、落下により加速した巨大戦艦レキシントンを止める術などありはしない。 文字どおり壊走し逃げ惑う。 「ブッ潰れろぉぉぉぉ!!」 最高に『ハイ!』になった偏在のワルドが地面と激突する20秒ほど前に船体に火を付ける。 そうして船体が燃え上がり、地面に激突すると同時にレキシントンが大爆発を起こした。 「き、旗艦を…こんな事に使うなどとは…!」 アンリエッタとマザリーニは辛うじて爆発から逃れたものの、他はもうスデに壊走していると言ってもいい状態で、被害状況すら分かりはしない。 もちろん、このまま壊走状態のままでは、何もせずに敗北するであろうことは十分に分かっている。 「部隊の再編を…被害状況も確認しなければ」 生き残った将軍と素早く打ち合わせをするが、遥か彼方から下がりに下がった士気にトドメを刺す光景を見る事になった。 「……なんだ…あの船は…」 歴戦の将軍ですら、我を忘れたかのようにその船を凝視している。 その目には、あの巨大戦艦『レキシントン』よりも一、二回り大きく、さらに装甲を金属で覆った艦が空を飛んでいる光景が目に映っていた。 その船からボーウッドがラ・ロシェールを見ている。 『レキシントン号だッ!』作戦には本来乗り気ではなかったが、この船を見た瞬間気が変わった。 装甲を金属で覆い、さらに、あのクロムウェルが連れてきたシェフィールドと呼ばれる女がもたらした技術より格段に上の装備のこの船を。 少し後ろを見る。 そこには、ワルドが召喚した使い魔が鎮座していた。 正直なところ、この船が存在するのが使い魔のおかげだなど未だ半信半疑だ。 確かにジョンストンなどより、余程司令長官らしい佇まいをしている。 船長服を身に纏い、パイプを吸っている姿など、憎たらしいぐらい余裕あり気だ。 これが、人間であればまだ納得できたであろうが… 「『ストレングス』か…確かにレキシントンが玩具に見える船だが…」 そう呟き視線を前に戻す。 その使い魔の正体は広義で見れば『猿』だった。 ←To be continued
https://w.atwiki.jp/srwz2nd2/pages/185.html
シナリオ攻略 第27話 『ゼロVSゼロ』 勝利条件 初期 ウイングガンダムゼロの撃墜。 アルトロンガンダムの撃墜。 味方援軍出現後 ウイングガンダムゼロの撃墜。 ヒイロ撃墜後 敵の全滅。 敗北条件 初期 いずれかの味方ユニットの撃墜。 味方援軍出現後 味方戦艦の撃墜。 SRポイント獲得条件 アロウズ登場から4ターン以内にマップをクリアする。 初期配置・増援 初期 初期味方 紅蓮可翔式(カレン) 初期味方 蜃気楼(ゼロ) 初期敵 ウイングガンダムゼロ(ヒイロ) 初期敵 アルトロンガンダム(五飛) 3PP or 五飛を撃墜 or ウイングガンダムゼロのHP60%以下(撃墜含む) 味方援軍1 アルトロンガンダム(五飛) 味方援軍1 母艦選択×1 味方援軍1 プトレマイオス2(スメラギ) 味方援軍1 イカルガ(扇) 味方援軍1 出撃選択×20 敵増援1 エンプラス(デヴァイン) 敵増援1 ガデッサ(リヴァイヴ) 敵増援1 ゲルズゲー(モビルドール)×4 敵増援1 ビルゴ(モビルドール)×16 敵増援1 バイアラン(モビルドール)×6 ヒイロを撃墜 敵増援2 アルケーガンダム(サーシェス) 敵増援2 ゲルズゲー(モビルドール)×2 敵データ 初期 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 ウイングガンダムゼロ ヒイロ 40 (32750) 7(4) 9500 22 1 - MAP兵器ゼロシステムゼロを狙う アルトロンガンダム 五飛 40 (17450) 6(5) 6200 22 1 - ゼロを狙う 敵増援1 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 エンプラス デヴァイン 39 (30750) 7(4) 15000 24 1 補助ISC 天才、援護攻撃L3GNフィールドEN回復(小)ソレスタルビーイングを狙う?(ティエリア等) ガデッサ リヴァイブ 39 (26750) 8(3) 14000 22 1 スナイパーキット 天才、援護攻撃L3EN回復(小) ゲルズゲー モビルドール 38 (10350) 6(3) 3700 7 4 - 援護攻撃L2援護防御L1陽電子リフレクター ビルゴ モビルドール 38 (9350) 7(0) 3800 6 16 - 援護攻撃L2援護防御L1プラネイトディフェンサー バイアラン モビルドール 38 (7650) 6(3) 2700 5 6 - 援護攻撃L2援護防御L1 敵増援2 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 アルケーガンダム サーシェス 39 (24750) 7(5) 12000 22 1 アドレナリンアンプル 極、EN回復(小)刹那を狙う ゲルズゲー モビルドール 38 (10350) 6(3) 3700 7 2 - 援護攻撃L2、援護防御L1陽電子リフレクター イベント・敵撤退情報等 3PPまたは五飛を撃墜、ウイングガンダムゼロのHP60%以下(撃墜含む)で味方が西に、敵増援が南に出現。カレン、ゼロ、五飛が味方援軍付近に移動。 EPに増援条件を満たすとその時点でEPが終了し、次PPに増援。 増援と同時にウイングガンダムゼロが全回復、ヒイロの気力170に。 ヒイロと特定ユニットが戦闘すると、戦闘後にヒイロの気力が増減する。カトル、カミーユ、バサラ(-5) ゼロ、刹那、クロウ(+5) ウイングガンダムゼロの撃墜でイベント、敵増援2が北に出現。 このシナリオには終盤のルート分岐に影響する隠し条件が存在する。詳細は隠し要素へ。 攻略アドバイス ゼロポイントも五飛撃墜も不要なら、2機とも南西に逃げて、3PPを待てば良い。 PPに増援条件を満たした場合、増援後にゼロとカレンは未行動状態になる。ウイングガンダムゼロのHP60%以下を目指すなら、相手の移動後射程である11マス離れた位置に移動すれば反撃もできる。 例に漏れず、SRポイントの獲得制限には出現ターンも含まれる(3PPなら6PPまで)。 カトル、カミーユ、バサラは、ヒイロと戦闘すると気力-5の効果があるものの、ヒイロは第三軍用の特殊スキル構成のため、ダメージを与えて反撃を回避すると、結局-1にしかならない。このためだけに、3人を出撃させて、交戦させる必要は薄い。 味方増援後、第三軍のヒイロは、イベントで気力170になる。気力を130未満にしてゼロシステムを解除するには、最低でも「脱力」を5回かける必要がある。ほかに「極」持ちのサーシェスなどのボスも3体いるので、「脱力」を使えるパイロットは、すべて出撃させるくらいでもよい。SP回復系の強化パーツも、余裕があれば装備しておこう。 味方初期配置の8,13,17,20番に、射程8のユニットを置くと、敵増援のビルゴ2体に、一方的に攻撃できる。 サーシェスを誘導するために、刹那を出しておくと良いかもしれない。サーシェスは、移動後P攻撃の範囲内に、攻撃可能な機体がいる場合、刹那の方角ではなく、攻撃を優先して移動することがある。P攻撃の射程は5と長めなので注意。 増援はほぼ全ての敵機が援護防御 無効化バリア持ち。隣接されたら「直撃」を持つユニットで片付けよう。 味方増援到着直後にヒイロを撃墜すれば、すぐにサーシェスたちが登場し、EPで移動を開始してくる。次のEPで、サーシェスを最優先で撃墜すれば、気力130未満の状態で相手できるので、楽になる。 敵増援の射程圏内に反撃可能な機体を放り込み、削りつつ移動させないようできればgood。EN対策をしたバルディオスに「鉄壁」「必中」をかけ、敵増援とサーシェスのP攻撃範囲内の両方にかかるよう、配置するとよい。具体的には、MAP南東の尖った岬の、北7マス目など。すると、EPで大量のザコが集まり、反撃で削ることができ、サーシェスを「援護防御」つきの取り巻きから孤立させることができ、反撃のサンダーフラッシュで、気力上昇前のサーシェスに大きなダメージを与えることができ、さらに次PPで、「連続行動」を発動させた蜃気楼のMAP兵器で13機ほど当てられ、隣接して相互「援護防御」状態の敵陣を崩すことができて資金も稼げ、生き残ったザコもあと一撃で倒せる状態になるという、一石五鳥くらいの大きな効果がある。 西側のビルゴは水中にいるので、海適応の高い武器やスクリューモジュールを装備した機体を。相手がビーム兵器中心のMS・MAなので、海適応が高いユニットはそのまま沈めて戦わせると楽。 クロウのブラスタなども海適応は高いが、海で戦闘が起こることは、味方増援直後以外には、あまりない。 アルトロンのツインビームトライデントが海Aなので出し忘れた場合でもなんとかなる。 ゼロシステム+底力+ガードが発動したウイングゼロは超合金Zもかくやという硬さ。無改造の武器ではまともにダメージが通らず、再攻撃もゼロシステムの技量補正で絶望的。脱力やロジャー(AB未取得だと減らせない)、イベントを使い気力を下げれば下げるほど楽に。特に、130未満にできればガードとゼロシステムが解除される。 前述の通り、「脱力」に頼らないと、ヒイロの気力を130以下にすることは困難。 ヒイロはゼロ狙いなので、ゼロを西へ移動させおびき寄せておくと援軍がすぐにヒイロを攻撃できる。 SRポイント取得のためには、増援2の出現条件であるウイングガンダムゼロの撃墜タイミングがポイント。素早く(というか、味方増援出現と同じPPに)ウイングガンダムゼロを撃墜して増援を出せば、すぐにこちらへ向かってくるので全員で相手ができる。 雑魚を撃墜して気力を上げつつ数機を北に向かわせ、ヒイロとサーシェスを一気に落とすのもいい。どちらもガンダムなのでABを獲得していれば刹那が適任。ヒイロの気力は上がるがそれ以上の効果を期待できる。 増援前にウイングガンダムゼロを撃墜するには19650以上のダメージを一度に与える必要がある。以下1周目撃墜例。暗黒大陸ルート限定。ゼロAB獲得済・闘争心、蜃気楼武器10段改造・カミナのサングラス・アドレナリンアンプル×2。1PP・EPで全て攻撃すれば2PPに戦意高揚で気力150以上になり、ABで熱血or魂が出れば単独でも撃墜可能。 カレン初期気力120・AB獲得済・格闘195・技量224・再攻撃・紅蓮武器10段改造・CB獲得済・破界の紋章・武器地形適応S。1ターン目に分析+輻射波動で12000程度。2ターン目に分析+輻射波動+再攻撃+指揮で撃破。 両方の武器を改造し、どちらかに援護攻撃をつければなんとかなる(要クリティカル)。 戦闘前会話 ヒイロ:ゼロ、カレン、刹那、カミーユ、デュオ、カトル、五飛、クロウ、バサラ 五飛:ゼロ、カレン サーシェス:刹那、ロックオン 隣接シナリオ 第26話 『冥府への転落』 第28話 『暗黒よりの使者』
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1514.html
ある日の事だ。 平賀才人が命じられた部屋の掃除をしていた時、偶然にもそれを見つけ出した。 革で出来たベルト…それは紛れもなく『首輪』だった。 顔中を流れる嫌な汗。 以前、キュルケの部屋を訪れた際、ルイズが言っていた言葉を思い出す。 『……今度、こんな真似したら首輪を付けるわよ』 あれは本気だったのか。 だが自分には怒られるような事をした記憶はない。 それとも知らない間に、ルイズの癇に障るような事をしでかしてしまったのか。 首を握り締めたまま、才人は理不尽な暴力に打ち震える。 「……あれ?」 ふと気付く。 自分用に買ったにしてはあまりにも小さすぎる。 それこそ本当に犬用の物とサイズが変わらない。 その上、その首輪はボロボロで少し力を入れただけでも千切れそうだ。 「あーあ、とうとう見つけちまったか」 壁に立て掛けてあったデルフリンガーの声が部屋に響く。 その声はどこか過去を懐かしむようでもあり寂しげにも聞こえた。 「これが何か知ってるのか?」 「ああ、知ってるとも。俺の前の相棒の物さ」 嬢ちゃんも口には出さなかった。 他の連中も何も言わなかった。 話さずに済むのなら、それに越した事はなかった。 彼の前任者、ルイズの使い魔であった奇妙な来訪者の事を……。 世界とは自分の認識できる範囲に過ぎない。 知らなければ、それは存在しないのと同じだ。 だから、この狭い実験室こそが彼の世界の全てだった。他には何も無い。 人の命さえも道具と見なす彼等の実験動物に対する扱いは過酷を極めた。 遺伝子操作を行い、あらゆる環境の変化に耐えられる生命を作る実験など、 医学の発展の為という範疇から外れた異常な研究がそこでは続けられていた。 ここまで生き延びてきた実験動物も数えるほどにしかいない。 そして今日、彼の最後の仲間が死んだ。 レーザーで全身を撃ち抜かれた上に、火炎放射器で焼却されたのだ。 今や形さえも残っていない。 数日経っても空いたままの仲間の檻を眺めて、 ここには二度と戻ってこない事を彼は悟った。 彼の本能が“次は自分の番だ”と告げていた。 だが抗った所でどうにもならない。 命も運命も全て他人の手の平の上。 仲間同様に注射を打たれ、水槽の中へと沈められていく。 彼が目覚めた時、その時こそが命の終わる時なのだ。 …だが『ドレス』の崩壊と共に彼の運命は解き放たれた。 彼が目覚めた場所、それは見慣れた実験室の中だった。 自分を閉じ込めていた水槽は砕け、辺りは水浸しになっていた。 周りには誰もいない。 それどころか壁には見た事もない巨大な穴が開いている。 恐る恐る穴へと近づいていく。 初めて目にする部屋の外の景色。 実験室とは代わり映えのない風景だったが、 それでも彼の目には一筋の希望が見えた。 “ここから出られるかもしれない” それは生きる為の脱出。 この先に何があるのかは分からない。 それでも何もしないで死ぬのを待つよりは遥かにマシだ。 廊下を駆ける。それを咎める者など誰もいない。 鳴り響くサイレンの中、赤く明滅するランプが周囲を照らす。 どこまでも続くかのような錯覚の中、彼は走り続けた。 …だが、その道は途切れていた。 降りた隔壁が完全に向こう側を遮断している。 壁へと爪を立てる。 だが、そんな物で鋼鉄をどうにかできるはずがなかった。 初めから希望など無かった。 この道はどこかに続いていると信じていた。 でも、どこにも繋がってなどいなかった。 元来た道を振り返るが、それも叶わない。 建物中に響き渡る爆音。 そして炎と爆風が周囲を飲み込んで迫り来る。 目前の隔壁と背後から近づく明確な死。 逃げ場など何処にも無い。 絶望の中、彼は壁に出来た巨大な隙間を目にした。 さっきまでこんな物は無かった。 だが、そんな事はどうでもいい。 一か八か最後の勇気を振り絞り、彼はそこへと飛び込んだ。 「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 キュルケやモンモランシーの前で啖呵を切った手前、失敗は許されない。 自分を見つめる視線の多くが“どうせ失敗するだろう”という揶揄や嘲笑だという事も分かっている。 『ゼロのルイズ』…その名で呼ばれる度、何度歯を食いしばって耐えただろうか。 だけど今日から違う。二度とその名を呼ばせはしない。 サモン・サーヴァントに成功し、一人前の魔術師として歩みだすのだ! 「私は心より求めうったえるわ! 我が導きに答えなさい!」 詠唱と共に振り下ろされる杖。 それと同時に巻き起こる大爆発。 いつも通りの結果に咳き込みながらも失笑が起こる。 そう。ここまではいつも通りの結果だった…しかし。 「……おい。嘘だろ」 「そんな…ありえない」 視界を覆う砂埃が静まるにつれ失笑が止んでいく。 代わりに響き渡るのは周囲のどよめき。 何度も目を疑うがその光景に変化はない。 ルイズが引き起こした爆発の中心、そこには気絶した一匹の犬がいた。 それは紛れもなく彼女の召喚が成功した証。 「……やった。やったわ」 思わず口から洩れる歓喜の声。 打ち震える感動に両の拳を力強く握り締める。 キュルケのサラマンダーには及ばないけど、これだって立派な使い魔だ。 もう誰にもゼロなんて呼ばせない。 「ミス・ヴァリエール。 嬉しいのは分かりますが授業の時間も押していますし、早く契約を済ませてください」 「はい! 先生」 満面の笑みで応える。 使い魔へと歩み寄る足取りも軽い。 まるで別の自分に生まれ変わったよう。 いいえ、違うわ。これこそが私。 『ゼロのルイズ』じゃない本当の『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。 その私の使い魔が今、眠りから目覚める。 あまりの眩しさに目を覚ます。 そして顔を上げて辺りを見回した。 どこまでも続く廊下も絶壁のような隔壁もない。 いや、そんな事など一瞬で忘れてしまった。 目覚めた時、世界は大きく変わっていた。 薄暗い照明は燦々と輝く太陽に、 白一色だった天井は澄みきった青空に、 冷たく無機質だった床は柔らかく心地よい芝生に、 そして世界を覆う壁など存在しない。 地面も空もどこまでも果てしなく広がっている。 “なんて……美しい” 思わず息を呑む。 彼は初めて研究所以外の世界を知ったのだ。 体中を駆け巡る興奮に、いてもたってもいられず走り出した。 目の前の景色が幻でない事を確かめるように、ただがむしゃらに駆け回る。 「こら! 待ちなさい!」 目の前で逃げ出した使い魔に唖然としていたルイズ。 だが、すぐさま大声を上げて後を追いかける。 「はは、見ろよ。ルイズの奴、使い魔に逃げられてやんの」 「やっぱルイズは『ゼロのルイズ』のままだよな」 周りから湧き上がる爆笑の渦。 傍から見れば主人と使い魔の追いかけっこ。 見世物としては珍しく面白いものだった。 キュルケの口から“やれやれ”と溜息が洩れる。 まあ、少なくとも召喚に失敗して学院にいられなくなるという事はなくなった。 使い魔に多少の問題はあるようだけど、それはいつもの事。 溜息に安堵の色が混じっていた事は秘密にしておこう。 走る。ひたすらにどこまでも走り続ける。 息が切れるのも構わない。 澄んだ空気を肺に取り入れる度に力が湧いてくる気がした。 存分に駆けずり回った後、芝生に横になる。 新たな世界を思う存分満喫した彼は思う。 ここは別世界だ。 運命を支配する残酷な手も存在しない。 この世界はこんなにも生命に満ち溢れている。 そう、自分は生きている。 今までは自分の『生』などというものはなかった。 だが今は確かに生きている実感がそこにあった。 生きている、それだけの事がとても素晴らしく思えた。 「ようやく追いついたわ!」 掛けられた声に振り返る。 桃色の髪と黒いローブ。 薬品の匂いも金属の匂いもしない、 彼が初めて目にした『人間』の姿がそこにはあった。 世界を越えた一人と一匹の出会い。 それが後に語られる事なく消えていった使い魔の冒険、その始まりだった……。 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/692.html
トリスティン魔法学園のとある教室。 そこに2つの人影入ると、それまで雑談していた生徒達が一斉に好奇の視線を向ける。 朝食を終えたルイズと育郎である。 二人を確認するとくすくすと笑い出す生徒達を、無視して席に座ろうとするルイズに 一人の生徒が声をかける。 「あらルイズ、貴方本当に平民が使い魔なのね」 燃えるような赤い髪に豊満な肉体、褐色の肌を持つその生徒を、ルイズは苦々しく見た。 「キュルケ…なによ、何か用なの?」 「用事って程じゃないわよ、貴方の噂の使い魔を見たくてね。へ~」 そういって育郎をじろじろと見る。 「中々いい男じゃない…でも、やっぱり使い魔って言ったらこういうのじゃないと」 キュルケの横から、真っ赤な巨大トカゲがのっそりと身を乗り出してくる。 「これって、サラマンダーじゃない…」 「そうよー、火トカゲよー。見てこの尻尾!」 悔しげにサラマンダーを見ながら、キュルケの自慢話を聞くルイズを横目に、一人育郎は 眼の前のサラマンダーと、周りにいる使い魔たちを感心して見ていた。 (本当に漫画やゲームの世界だな…あれはキメラ、いやマンティコアだっけ?) 「ルイズ…あの浮いている目玉はなんて言うんだい?」 「鈴木土下座衛門って…ちょっとあんた、恥ずかしいからキョロキョロしないでよ!」 「いいじゃない。貴方、私の使い魔はどう?素敵でしょ」 と言われても、育郎にサラマンダーの良し悪しなど判るはずもない。 大きさを褒めるべきなんだろうか? それとも色? そういえば昔、沙羅曼蛇ってゲームがあったっけ? 小学校で同じクラスになった花京院君はゲームが上手かったな… 禁止と言っても毒ガスを放つドイツ超人を必ず使うから嫌われてたっけ 彼は今どうしているのだろう? 「はいはい、みなさん席に座って」 そうこう考えてるうちに先生が入ってきたようだ。 助かったと思い、席に座ろうとするが「使い魔は椅子に座っちゃ駄目!」とルイズに 言われた為、仕方なく教室の後ろの壁に背を預ける。 ふくよかな頬から優しい印象を受けるミセス・シュヴルーズは土の魔法の先生らしい。 授業は始めてと言う事もあって、実にわかりやすい。 (それにしても…火、水、土、風はわかるけど虚無か) 属性の説明を聞きながら育郎は考える。 失われた属性と言われる虚無。 他の事柄は、それこそ漫画やゲームの知識のままだが、虚無と言うのは異質に感じる。 「では…ミス・ヴァリエール、この石を『錬金』で金属に変えてみてください」 その声で考えを中断して、ルイズの方を見る。 するといつも元気なルイズが、困ったようにもじもじしているではないか。 周りの様子もおかしい。 「なんて事だッ!『ゼロのルイズ』に魔法を使わせる事になってしまったッ! ラ・ヴァリエール家が生み出した、恐るべき暴発兵器『ゼロのルイズ』をッ!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせることは核爆発させる事と同じだッ!」 等と叫ぶ生徒もいれば、急いで机の下に隠れる生徒もいる。キュルケも顔面蒼白だ。 それとは対照的に、前に出たルイズににっこりと微笑むミセス・シュヴルーズ。 「ミス・ヴァリエールッ! あなたは必ず錬金を成功できるッ!もっと!もっと! 石ころを金属に変えれるとおもいなさいッ!空気を吸って吐くことのように! HBの鉛筆をベキッ!とへし折ることと同じようにッ!出来て当然と思うのですッ! 大切なのは『認識』することですッ! 魔法を操ると言う事は、出来て当然と思う精神力なのですッ!」 ミセス・シュヴルーズのアドバイスに意を決して杖を掲げる、ルイズ。 精一杯頑張っていますと、全身からオーラを出すルイズを見て、育郎は思わず微笑んだ。 そしてルイズが勢いよく杖を振り下ろした次の瞬間…机の上の石ころが爆発した。 ルイズは自分の魔法の失敗で生まれた爆風を受けながら考えていた。 またやってしまった…また失敗してしまった… そして自分につけられた二つ名を嫌でも思い出す。 ゼロのルイズ 魔法の成功率ゼロ 落ちこぼれの証 泣きたくなるほど情けなくなるが、彼女の人一倍高いプライドがそれを許さなかった。 とりあえず何かを言って誤魔化さなければならない。 失敗しちゃった(テヘ) 等と言うわけにはいかないのだ。何か良い言葉は無いか… また、つまらぬ物を爆発させてしまった… こんなのはどうだろう? いいぞ、なんかそこはかとなく格好良い気がする。 意を決して口を開こうとした時、誰かが自分を揺さぶっている事に気付いた。 「ルイズ、大丈夫かッ!?」 「はえ?」 「よかった…怪我はない………先生!先生、大丈夫ですか!?」 ルイズに大した怪我が無い事を確認した育郎が、今度はミセス・シュヴルーズを介抱する。 「おお…一体何が…」 「わかりません…急に爆発が起きて…」 「そんな!ミス・ヴァリエールは?生徒達は大丈夫ですか!?」 「ええ、心配ありません。みんな無事です」 「ああ…よかった…本当に良かった…」 安心して泣き崩れるミセス・シュヴルーズ。 その光景を呆然としながらみつめる生徒達とルイズ。 「君、お医者さんか保険の先生を!」 「あ、うん…」 普段なら「平民如きが貴族に命令するんじゃない!」と怒るところだが、 状況についていけないその少年は素直に従う。 「な…なにこれ?彼は何をしているの!?」 キュルケが信じられないと言うようにつぶやく。 「いや、これが『普通』なんだ…」 「え?」 誰と無く言った言葉に、医務室から先生を連れてきた少年が答える 「僕達も最初はああだった…でもいつのまにか慣れてしまったんだ… 彼は、僕達に忘れていた大切な何かを思い出させてくれたんだよ…」 「ていうかあなた誰?」 「な!?マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!去年も一緒だったろ!?」 「そうだっけ?」 「ひどい!?」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1210.html
ご機嫌で朝食を終えたルイズは部屋に戻り一息ついた後、腕を組み仁王立ちしてアヴドゥルにのたまう。 「私がコーディネートしてあげるわ!」 もうルイズとアヴドゥルの共同生活も長い。ルイズの性格を半ば強制的に理解させられたアヴドゥルは普段細やかな気配りをしている。 毎日の起こし方に始まり着替え、イスの引き方、会話中での相槌のタイミング、よいしょ…etc。 ジョセフ達が見たら思わず涙ぐみそうに成る…また職業メイドのシエスタに、 「アヴドゥルさん…マスター・オブ・メイドと呼ばせてください!」 と言わせた程の尽くしようである。………まさに至れり尽くせりでルイズも熟睡するはずだ。 もちろん、アヴドゥル自信が大して苦に思っていないからこそできることである。嫌いならさっさと逃げ出している。 同じ子供なのに承太郎や花京院とは全く違うルイズ。いや…違うというより完全に別の生き物のようなだが。 気性が荒く意地っ張り…でも優しさと思いやりを持つルイズをアヴドゥルは段々好ましく思っていき、今ではちょっとして擬似子育てのような感じで接している。 だから、これは彼らしくない失言だった。 「(君は)何を言っているんだ?」 昨日の騒動のせいで精神的に疲労していたアヴドゥルは思わずルイズに冷たく返してしまった。ちょっと痛い子を見る目になってしまったのがさらにまずい。 言った後……、 (しまったッ!……今日は飯抜きか) ルイズの反応や自分の今後がたやすく想像できちょっと鬱が入るアヴドゥル。……心の傷は体のように次話には治らなかった。 ルイズは決して口にはしないが、(たぶん)学院一の力(マジシャンズ・レッドのこと)と知性(人間なので当然)を持つ優秀な使い魔―アヴドゥルに感謝していた。 ギーシュとの決闘でアヴドゥルの力が知れ渡ったことを機に、ルイズをあの忌まわしい『ゼロ』と呼ぶもの(アレってイジメだよね?)がいなくなったためだ。 もちろんすぐにイジメが無くなった訳じゃない。決闘後も… 「凄いのは使い魔だけだろ!やっぱりルイズは魔法の使えないゼロじゃないか!」 と何人かは言っていた。…が、イジメの様な行為が嫌いなアヴドゥルに睨まれ二の句を言えなくなる。 結果、アヴドゥルが怖くて表立っては『ゼロ』と呼べないためコソコソと陰口を叩き始めた。 コソコソ陰口を叩かれる日々。始めは不快に思っていたルイズだがある時、天啓を聞く。 ―なにルイズ?周りが陰口してイジメてくる?ルイズ。それは周りを過大評価するからだよ。逆に考えるんだ「陰口しか叩けないなんてド低脳だ」と考えるんだ しかし、卿の名言も意味が無かった。アヴドゥルのルイズへのあまりにも忠実な仕え様に誰も『ゼロ』と陰口できなくなったからだ。 ―メイジの実力を見るにはまず使い魔を見ろ とはよく言うが、それはあくまで使い魔をメイジが制御できている場合の話。強力な使い魔を呼び出してしまいも制御できなくては話にならない。 特にドラゴン等の高い知能を持つモノは極めて制御が難しく、幾らルーンの補助があるといってもメイジがヘボでは制御できない。 それを人……いやメイジ匹敵する知能を持つ亜人(ルイズ、シエスタ、ロングビル以外にはそう認識されている)を完全に制御しているルイズの姿はまさに女王-ツンデレクイーンのようだった。 例え今魔法が使えないとはいえ、ルイズから溢れ出るメイジとしての器の凄み(勘違いです)に生徒はもちろん教師ですら一目置くようになる。 ルイズは朝からアヴドゥルに元気がないなーと思っていた…が、今の項垂れている姿を見て確信する。 (昨日の事件など全く知らないため)アヴドゥルの元気の無い原因は、前の世界が恋しくなりホームシックになったことだと。 そして、デザートをパクつきながらホームシック(思い込み)のアヴドゥルを元気付けるため一生懸命考えた案を言った。 ………冒頭のアレである。唐突すぎて何が言いたいのかいまいち分からなかったが。 慣れないことをしているため、ちょっと興奮気味のルイズはアヴドゥルの痛い子を見る目をスルーする。 「ふふんッ今から街に行くわよ」 「街?」 「そうよ」 えっへんとでも言いたげに胸を張り答えるルイズ。 「あんたの服を買ってあげるから感謝しなさいよ!」 「……服?」 旅の間も着ていた慣れ親しんだ服はよく見る少々草臥れてきている。 「一着しかないんでしょ?だから、私が買ってあげるって言ってるの」 「それは有難いが…いいのか?」 「気にしなくていいわ。使い魔の面倒を見るのも主人の勤めだし、それに………ゴニョゴニョ」 「ん?何だ良く聞こえないぞ?」 調子よく話していたのに途中から俯き小声になったルイズにアヴドゥルが問う。 本当は―味方なんかいなかった学園生活で、初めて味方になってくれたアヴドゥルにちょっとしたお礼がしたい―みたいなことを言っていたのだが、 ツンデレのルイズは素直になれずツン全開で喚く。 「べべべ、別にあんたにプレゼントしたい訳じゃないのよ!たたた、たまたま虚無の曜日でたまたま街に用事があったから行くんだから!」 真っ赤な顔で手を上下にブンブン振ってるルイズを見てアヴドゥルは思う。 (ツンデレか……いいかもしれんな) 久々のツンデレは弱っているアヴドゥルに中々効果があったようだ。『漢』の世界の扉は開くのか?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/908.html
「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 生え際の後退著しい中年教師が意を決したように言う。 その教師――名はコルベールといった。 コルベールはここ、トリステイン魔法学校にて2年生が行う中では最重要とも言える行事である召喚の儀式の監督を務めていた。 そしてその結果は満足に値するものであった。 上位陣にはそれはもう美しい風竜を召喚したタバサ、火山竜脈のサラマンダーを召喚したキュルケがいたし、 それ以外の生徒達も十二分に成功といえる内容の召喚を行っていた。 これから儀式を行う、一人の女生徒を除いては。 彼女は別にヤサグレてる訳でもなかったし成績が悪かったわけでもない。 他の生徒とのコミュニケーションも十分に取れている。 しかしただ一つ。 本当にただ一つだが彼女には欠点があった。 そしてその欠点こそがコルベールを不安にさせていた。 が、そんなコルベールの心配をよそに―― 「はいッ!」 その生徒――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは威勢のいい返事をした。 といっても別に彼女自身がこの儀式に対して特別に自信を持ってたわけではない。 むしろその心中では、 (大丈夫よ大丈夫よ大丈夫よ! 使い魔の召喚の儀式なのよ? いくら私が『ゼロ』だなんてバカにされてても…これが成功しないハズはないわッ! だから自信を持つのよイズッ!!) 全力で自分に暗示をかけていた。 そしてそれに反映されるように既に召喚を終えた生徒たちは、 「なあ…成功すると思うか?」 「いやいくら『ゼロ』でも召喚の儀式ぐらいは…」 「でもあの『ゼロ』だぜ?」 「だよなあ…失敗するかもだよなぁ~~」 どうにもルイズの成功を期待していない。 そんな周囲のヒソヒソ声と、「ルイズが成功するわけが無いでしょう。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」みたいな態度の生徒たちをを横目に見て、 ルイズはいつものようにカチンときた。 同時にさっきまでの不安もそのムカツキで吹っ飛んだ。 (ふん! 見てなさいよあんたたちッ! 私があんた達の使い魔よりもずっとカッコよくてずっと強い使い魔を召喚してやるんだからッ!) そして詠唱する。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに答えなさいッ!!」 気合十分の詠唱ッ! 手ごたえは十分ッ! (やったッ! 成功す――) ルイズがそう確信した瞬間―― ドッグォォォォォオオオオオオオオン!!! 盛大な爆発が巻き起こったッ! その規模は場所が場所なら「今ノハ人間ジャネェ~~~」なんて声が聞こえてきそうなレベルッ! 同時に爆心に近かったルイズは体重の軽さも相まって勢いよく後ろに吹っ飛ばされるッ! そして2度3度後転を繰り返した後、ルイズはべちゃっと地面にキスするハメになった。 「オホッオホンッオホン!」 「ゲホッゴホッ! クソッまたやったな『ゼロ』!」 「使い魔の召喚にさえ…ゲボッ! 失敗するなんて君も筋金入りだなッ!」 周囲から聞こえてくる罵倒をうつぶせの姿勢のまま聞き――ルイズは泣きたくなった。 (なんで…どうして『成功』しないのよぉ~~~~~~~~~!) 目にはじんわりと涙が浮かび始めたが、必死でそれをこらえる。 たとえ「ゼロ」と呼ばれてしまうようなメイジだったとしてもルイズは由緒正しきヴァリエール家の3女である。 そのプライドが彼女をギリギリのところで支えたのだ。 だがルイズがそんな衝動と戦っている頃―― 「お…おい!煙の中に何かいるぞ!」 「ホントだ! でもあのシルエットは…」 「サルにしちゃあ背が高すぎるし…」 「人間にしたってあれはデカすぎる!2メイルくらいはあるんじゃないか?」 「じゃあ亜人? オーク鬼か何かってことか?」 「おい! 煙が晴れるぞ!」 周囲の会話にようやく気づき、そして周囲に気づかれないようにこっそり涙をぬぐったルイズの目に映ったのは―― 実に奇妙ないでたちの人間、いや亜人だった。 贅肉の一切見当たらない筋肉質の身体には文字のようなものがびっしり彫りこまれており、 頭には奇妙な形の頭巾、そしてその身に纏うのはいずれも紫がかった黒色の襟巻きと短パン、リストバンドにブーツのみで、 しかも襟巻きと短パンの二つが体の正中線で帯のようにつながっている。 民族衣装だとかその類だとしても、かなりきわどい、いや、むしろ変態的な格好だ。 しかもよく見てみれば、耳も鼻もこの亜人には無い。 削がれたような傷が無いあたり、生まれつきそれらを持っていないとでも言うのだろうか? (なに…何なのコイツ? こんな亜人、あたし図鑑でも見たことなんて…) そんなことを考えていると、突然件の亜人が文字通り「飛ぶようにして」ルイズの前に移動した。 その速度はドヒュウゥン! と空気を切るほどッ! 「きゃあ!」 思わず悲鳴を上げるルイズ。 周囲も唖然としている。 だが亜人はそんなことは気にもかけないという様子でルイズに話しかけたッ! 「オ嬢サンニ聞キタイ事ガアル」 何だかカタコトだが、そんなことを気にしている余裕はルイズにはない。 「な、なななな、何よッ! そもそもあんた、何者なのよッ!名前と種族を言いなさいッ!」 「質問ニ対シテ質問で答エルノハ無礼ニ相当スルノダガ…マアイイダロウ」 「私ハホワイトスネイク。種族ハ…ソウダナ。トリアエズ人間デハナイ事ハ確実ダ」 その答えにルイズの顔がぱあっと明るくなった。 そして周囲はどよめき始める。 「人間じゃないって事は…」 「『ゼロ』が召喚に成功したッ!?」 「信じらんねぇーーーーーーーーーーーッ!!」 「ウソだろ承太郎!」 「これは『現実』だッ!」 周囲がいろいろ言ってるが、今のルイズにはそんなたわごとは届きようも無い。 何故なら、何故なら今の彼女はッ! (やったわ! あたしが召喚したこいつが人間じゃあないってことは…あたしが使い魔の召喚に成功したということッ! やったわッ! あたしはやったのよッ!!) 「最高にハイ」ってヤツだったからだッ!! だがそんなルイズの心中をカケラも察することなく、亜人――ホワイトスネイクは再びルイズに話しかけた。 「サテ、私ガ君ノ質問ニ答エタノダカラ…今度ハコッチノ質問ヲ聞イテモライタイトコロダナ」 「あっ…そ、そうだったわね! さあ何? 何が聞きたいの? 何でも答えてあげるわッ!」 すっかりご機嫌&有頂天なルイズはお安い御用とばかりに言う。 「ココハドコダ?」 「ここはトリステイン魔法学校。あんたはあたしに召喚されてあたしの使い魔になったのよ」 「トリステイン魔法学校? ソレニ使イ魔ダト? 使イ魔トハ一体ナンダ?」 「メイジの目となり耳となって、メイジに忠誠を誓うもののことよ」 「メイジトハナンダ?」 「…は?」 いくらか問答を続けるうちに、とんでもない質問が飛び出した。 メイジとは何だ、だって? トリステイン魔法学校を知らないのは置いておくにしても、いくら未開の地の亜人だってメイジの存在ぐらいは知ってるはずだろう。 (あ…ひょっとしてこいつの一族ではメイジのことを別の呼び方でいうのかしら? うん、そうだわ。そうに違いないわッ!) ルイズは適当に脳内解釈を済ませるとホワイトスネイクとの質疑応答に戻る。 「メイジってのはね、簡単に言えば魔法を使える者のことを言うのよ」 「魔法…ダト?」 「………」 ここまでくると流石に脳内解釈はキツイ。 いやそもそも物を考えられる生物の中で、魔法を知らない者がこの世界にいるだろうか? コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい確実に、いないだろう。 「そもそもあんた…一体どこから来たのよ?」 「アメリカノフロリダ、ト言ウ所ダ」 「ふろりだ? どこのド田舎よ?」 「………」 今度はホワイトスネイクが沈黙する番だった。 「水族館」でエンリコ・プッチ神父とともにエンポリオに敗北したホワイトスネイク――もっともその時はメイド・イン・ヘブンだったが、 彼は本体のプッチ神父の死とともに消滅する間際、光る鏡のようなものに吸い込まれたのだ。 そして意識が戻ってみればこれだ。 周りは10代後半あたりであろうあどけない面を並べた小僧と小娘がお揃いの黒マントでズラリと囲んでおり、 その輪の中にはこれまた黒マントを着たピンクの髪の小娘がちょっぴり泥に汚れた顔でこっちを見ている。 しかもどういうわけか周囲の生徒も目の前の少女も自分の姿が見えているらしい。 ということは・・・こいつら全員がスタンド使いなのだろうか? 何故自分はいきなりこんなところにいるのか、とか何故本体であるプッチ神父を失った自分が存在し続けていられるのか、とか、 疑問はオキシドールと過酸化マンガンの反応から生成される酸素のようにムクムクと沸きあがってきていたが、 ホワイトスネイクはそれらの疑問をとりあえず置いておくことにした。 そして自分から一番近い小娘に話を聞いてみる。 するとその幼女は、トリステインだのメイジだのとホワイトスネイクが知りもしないような、 いやホワイトスネイクでなくても知らないような単語を当たり前のようにずらずらと並べて話をするではないか。 これには流石のホワイトスネイクも、 (マサカ我ガ主人トDIOガ目指シテイタ『新世界』トハコレノコトダッタノカ? 二人トモ私ニ内緒デ、随分ト変ワッタ趣味ヲ共有シテイタノダナ) などとまったく見当違いな事を考えざるを得なかった。 こうしてルイズとホワイトスネイクの間に気まずい空気が流れたところで、ようやくコルベールは我にかえった。 コルベール自身ホワイトスネイクのような使い魔を見るのは初めてだったし――ホワイトスネイクのド変態な格好をしていたのもあるが、 少しの間呆気に取られていたのだ。 コルベールは「オホン、ン」と軽く咳払いをすると、 「ミス・ヴァリエール。まだ使い魔との契約が終わっておりませんよ」 と言うと、ルイズもさっきのコルベールと同じようにハッと我に返り、 「ホワイトスネイク…だったわよね? あんたの名前」 「ソウダ」 「ちょっと屈みなさい?」 「何故ダ?」 「いいから屈みなさいよ。あんたの背が高すぎて届かないんだから」 ホワイトスネイクには何の事だかサッパリ分からなかったが、とりあえず言う通りにする。 ルイズはホワイトスネイクの頭が自分の身長と同じくらいにまで下がったのを確認すると、儀式に入った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・」 「待ってください、ミス・ヴァリエール!」 「え?」 突然コルベールがルイズの詠唱を遮った。 「…あなたはまだ使い魔との契約を済ませていない そうですね?」 当たり前のことを聞くコルベール。 「いきなり何を言い出すんだこのハゲは」とルイズは思ったが口には出さず、 「…はい。そうですけど」 当たり障りのない返答をした。 「そうでしょうね。私もあなたがこの使い魔を召喚してから、契約するところを見ていません。しかし…」 そこでコルベールは言葉を切ると、つかつかとホワイトスネイクのほうへ歩み寄る。 そしてホワイトスネイクの左手を取ると―― 「既に使い魔のルーンが現れているのです。この左手の甲に」 バァ―――――z______ン 「ウソ…」 その左手の甲に文字が浮かび上がっていた。 つまりルイズとホワイトスネイクとの契約は既に完了していたのだ。 こんなケースは召喚した本人であるルイズはおろか、教師であるコルベールにとっても見たことも聞いたことも無い怪奇であった。 そして二人ともそのことに沈黙している。 だが―― 「何ダ? コレハ…」 ホワイトスネイクはやはり空気を読まずに、自分の左手の甲にいつの間にか浮かび上がった奇妙な文字に興味を向けていた。 「と…とりあえず、この件は私が調べておきます。ではみなさん、今日はここまでです! 解散ッ!!」 と言って逃げるように、召喚の儀式のひとまずの終了を宣言する。 周囲の生徒達はなにやら状況が理解できていないようだったが、儀式が終了したことは理解したらしい。 そして次の瞬間、彼らはが突然ふわりと空中に浮かび上がったッ! さらにそのまま中世ヨーロッパの城のような建物へと飛ぶようにして移動し始める。 思わず目をむくホワイトスネイク。 しかしスタンドのヴィジョンが見えない以上スタンドに運んでもらっているわけではないようだ。 (確カコイツラハ『メイジ』トカイッタナ。 メイジトヤラハスタンド使イデ無クテモスタンドガ見エルモンナノカ? ソレニ…スタンド使イデナイノナラ…アイツラハ本当ニ魔法ッテヤツデ浮カンデルノカ?) などとホワイトスネイクが考えているとルイズから声がかかった。 「ほら、なにボケッとしてんのよ。あたしたちも行くわよ」 「君ハアノ空中ニ浮カベル力ヲ使ワナイノカ?」 当然ホワイトスネイクにとっては何気なく言った言葉である。 だがルイズはその言葉に一瞬顔を曇らせると、 「せ、精神力がもったいないから、使わないだけよ! 大体歩いていけば済むことなんだから、そんなことに魔法を使うなんてナンセンスよ!」 言葉の節々に何か言い訳じみたものを漂わせながらそう答えた。 そして逃げるように早足で、先ほどの建物の方へ行ってしまった。 「ヤレヤレ、ダナ」 そう呟き、ルイズの後を追おうとしたところで、ホワイトスネイクはあることに気づいた。 「コレハ…私ノ本体ガアノ小娘ニナッテイルノカ? トナルト…ソウカ、『契約』トハソウイウ事ダッタノカ」 そんなことを一人で勝手に納得しながら、ホワイトスネイクはルイズの後を追った。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/964.html
ヴェストリ広場に着く。 既に広場の中心には、人だかりが出来ていた。 おそらく彼処で、決闘とやらが行われているに違いない。 「なんだよ。もう終わりかい?」 その中心から、呆れたような男の声がする。 才人の声じゃない。おそらく相手の声だ。 今、なんといった? 終わり? もう勝負がついたというのか? いや、そんなはずはないだろう。彼はかなり意地っ張りだ。 一度決めれば、たとえ何回殴られようが、意地だけで立ち上がってくる。 早く止める必要がある。 僕は人混みの中に押し入った。 「おわ、なんだよ!」 「失礼。通してください」 途中、何度も人にぶつかりながら、何とか、決闘とやらが見える所までたどり着く。 そこには腹を押さえてうずくまる才人と、それを見下ろす鈍い赤褐色の甲冑をまとった像。そして、そこからやや離れた所に、薔薇を持った、きざったらしい少年。 たぶんアレが、グラモンとやらだろう。 「さて、これ以上続けるだけ無駄だと思うが?」 「……だ、誰がっ!」 震える足に手を置きながら、何とか立ち上がる才人。 それに併せて像が動いた。なるほど、あれが俗に言う、ゴーレムという奴か。 才人は大方、アレに殴られたのだろう。 さて、ここから妨害しても良いが、僕はそこまで無粋じゃない。 ましてや、二股がばれて、八つ当たりをするような奴だ。 ここで訳も分からないまま負かしても、またいつか余計なことをする。 必ず、奴のプライドを粉みじんにしなくてはならないッ! 僕は、決闘への乱入という形を取ることにした。 これこそゲームセンター界に伝わる、由緒正しい、プライドを潰す手順だ。 「なんだい、君は?」 「私の名前は花京院典明。今、ここで倒れている、平賀才人の友人だ」 僕が乱入したことで、人混みが一気に騒がしくなった。 乱入してきた僕が誰か、近くの奴に聞いているのだろう。 ゲームセンターで人が集まった台に乱入した時と、同じ反応だ。 「見ての通り、才人も私も平民だ。それに一対一で、決闘を挑むというのは、君たち貴族にとっては恥ずべき事じゃないのか?」 僕はルイズから、貴族というのは、平民相手には感情的になりやすいということを学んだ。 だから、この挑発は有効だという自信があった。 案の定、目の前の気障な少年も、ギャラリーさえも食いついている。 僕は口上を続けた。 「しかもこの決闘は、彼の逆切れからはじまったと聞く!」 そういってビシッ! と気障な少年の方に指をさす。 ギャラリーから失笑が漏れ、さされた少年の方はぴくぴくと頬を引きつらせている。 「元はといえば、あの香水を拾ったのは私だ! 格好つけて二股をするなら、我々平民の二人や三人、なぎ倒して見ろ!」 我ながら、意味の分からない理論だ。 だが、頭に血が上った奴には、この程度の挑発で十分効果を発揮する。 案の定、目の前の少年はあっさりと挑発に乗ってきた。 「良いだろうッ! 君もそこの平民と一緒に、僕の『ワルキューレ』で、貴族に対する礼儀を教えてやるッ!」 その一言と共に、ギャラリーが騒がしくなる。 「や、止めといた方が……」 「ギーシュ、お前じゃ無理だ」 「黙って、引っ込んでろよ」 「所詮貴様は只のドットメイジ。大人しく、そっちの平民をいたぶってろ」 何人かのギャラリーが、少年の止めに入る。というか、バカにしている。 顔を見ると、昨日、僕が暴れた場に居合わせた奴らだった。 「何だ君たちは! まさか僕が平民二人程度に負けるとでもいいたいのかッ!」 ギーシュとやらは、そのギャラリーに対して吼えた。 しかし、相変わらず止めに入った奴らは、少年に冷たい視線を送るのを止めない。 かわいそうだけど、明日の朝にはにはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね、といった感じだ。 しかし、止める奴らもいれば、煽る奴もいる。 「ギーッシュ! その生意気な平民をのしちまえーーー!」 「やっちまえーーーー!」 「ギーシュ(オサ)! ギーシュ(オサ)! ギーシュ(オサ)!」 こっちは昨日、暴れた時は居なかった奴らだ。 解りやすいぐらい、反応が二分化されている。 まぁ、どちらにしろ、いまさらギーシュは引けないだろう。 「さあ、どうするッ!?」 「決まっているッ! 決闘だッ!」 良し! かかったッ! 僕は才人に肩を貸して、改めてギーシュと正面から対峙する位置に立つ。 「花京院……」 「何ですか?」 「わりぃ……」 「そういうのは、勝ってからにしてください」 才人が立つ。 っと、そうだった。 「邪魔なんで、これ、持っておいてくれますか?」 「おう……」 僕はずっと手に持っていた槍を、才人に手渡した。 才人はその槍をぐっと握る。すると、突然、才人の左手に刻まれた文様が光り出した。 「何だよ、コレ!」 「!? ……いったい何が」 「平民、もう用意は出来たのか! 始めるぞ!」 とりあえず、光り出した才人の左腕の文様については後回しだ。 今は、この目の前のコイツを叩きのめすッ! 少年は薔薇を掲げ、その薔薇から花びらを飛ばす。 すると花びらから先ほどと同じゴーレムが、6体精製された。 先ほどのも合わせると7体。 「僕の二つ名は『青銅』! 青銅のギーシュだッ! 君たちは相応の喧嘩の売り方をしたのだからな! 思い知ってもらうぞ!」 どうやらこれが全力らしい。 ゴーレムは青銅製。なら… 「たいしたことはない! 食らえッ! 『エメラルドスプラッシュ』を!」 僕のハイエロファント・グリーンから、破壊のビジョンが、エメラルドとなって撃ち出される。 かなり厚みのある石の建物ですら破れるのだ。 ペラペラの、たかだか青銅製ゴーレムなんて、簡単にブチ砕けるッ! 僕のエメラルドスプラッシュは、ゴーレムを3体巻き込んで爆砕する。 ゴーレムは綺麗に、バラバラになって吹っ飛んだ。 「へっ?」 ギーシュは何が起こったか解らないといった調子で、その様子を眺める。その姿は何ともマヌケだ。 ようやく何が起きたのかを理解した少年は、慌てて叫んだ。 「ワ、ワルキューレ! 僕を守れッ!」 ゴーレム達が、ギーシュのフェンスになるように密集する。 だが、そんなことをしても無駄無駄無駄無駄ァ~。 僕はもう一度、スタンドでゴーレム達に標準を合わせた。 もう一発、エメラルドスプラッシュを叩き込むッ! 「待てよ、花京院。後は俺にやらせてくれ」 「才人?」 だめ押しにもう一発といった所で、才人が突然止めてきた。 後は自分が片づける? 言ってる意味が分からない。イカれているのか? この状況で。 「才人。まだ意地を張って……」 僕が制止の言葉をはき出す前に、才人はゴーレムに向かって走り出した 「早いッ!」 アレは人間のだせる速度なのか? 僕ですら、スタンドを介した視界で追うのがやっとという速度で、才人はゴーレムへとつっこんでいる。 おそらく、周りの人間には、何が起こったのか見えていないだろう。 才人はゴーレム達の前で立ち止まり、そのまま、槍を横ナギに振るった。 槍は、パクゥーと空気が裂き、ゴーレム達へとたたきつけられた。 ドグシャァと叩きつぶれるような音と共に、ゴーレムの上半身がちぎれ飛ぶ。 しかし槍も、HBの鉛筆をへし折るように、ペキィと叩き折れた。 それと同時に、才人の左手の紋様からでた光も収まった。 『世界ッ!』 ギャラリーはおろか、当事者の才人や僕ですら理解不可能な光景に、時が止まる。 「ひっ!」 『そして時は動き出す』 ギーシュのおびえた声と共に、再び時は動き出した。 才人の右手に握られた、へし折れた元槍と、上半身のちぎれ飛んだ、四体のゴーレムが、先ほどの光景が幻覚でないことを見せている。 僕はすぐさま、ギーシュの方を確認する。 ぺたんと座り込んで、目をまん丸くして才人の方を見ていた。 ぽろりと、手から薔薇が落ちる。 それと共に、残っていたゴーレムの下半身は、土に還っていった。 なるほど、あれが杖だったのか。 「続けるか?」 ギーシュの口がぱくぱく動く。 参ったというつもりだろう。 だが、ここで参ったといわれては、プライドを暗黒空間にばらまくことが出来ない。 肉体的にも、お仕置きをする必要があるッ! 僕は迷わず、ギーシュの口の中にハイエロファントを飛び込ませた。 そしてそのまま、ギーシュを操るッ! 「ふん。平民に僕が降参するだとッ! なんて! なんて面白いジョークだッ! ガボッ!」 「続けるんだな」 「ガボガボッ! 君なんて素手で十分だッ! フヒィーッ、フヒィーッ」 「なら、容赦しねえっ!」 (ゆ、許してくださいぃ~~~~~!) 操っているハイエロファント越しに、そんな思考が流れてきた。 それに対し僕は一言 (お前は男としての領域を踏み出した。だ め だ ね) と送り返す。 才人が思いっきり、右腕を振りかぶる。 ギーシュの目に、涙が浮かんだ。 才人の拳は、そのままギーシュの腹部へ吸い込まれる。 ドグオォっと鈍い音がした。 「いいか・・・このパンチはゼロのルイズにバカにされた分だ……八つ当たりと思うかも知れないが、コレはお前が俺に八つ当たりした分だと思え」 なんて理不尽な言い分だ。 だが、僕は才人のしたいようにさせておく。 「また、ゼロって……」 しかし才人。先ほどから、僕の後ろで殺気を放っている人物は誰だと思う? 「そしてこれもゼロのルイズにバカにされたぶんだッ! そして次のもゼロのルイズにバカにされた分だ! その次の次のも、その次の次の次のも…その次の次の次の次のも…次の! 次も! ゼロのルイズに飯抜きにされたぶんだあああーッ! これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも!!」 「!?」 僕のハイエロファントが、警告を発している。 マズイ! 「才人ッ! 早くギーシュから離れるんだァー!」 「え?」 しかし、もう遅かった。僕は急いでスタンドを引っ込める。 ギーシュは才人に襲いかかるようにして倒れ込んだ。 ギーシュは口元を押さえる。 「な、なんだよ。まだやる気か!?」 「うっ」 先程まで食後のティータイムを取っていたのだ、あれだけお腹を殴られれば…… 吐くに決まっているッ! 才人は見事なゲロ・スプラッシュの洗礼を浴びる事になったのだった。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1524.html
自分の使い魔をルイズが追いかけていった暫く後、彼女は使い魔を連れて戻って来た。 いや、正確には『抱きかかえて』戻って来たのだ。 疲れきったのか、犬の足が力無くぷらぷらと揺れている。 ぐったりとした表情で、横を向いた口元からだらしなく舌が出ていた。 「ルイズ、おまえ。使い魔が倒れるまで追いかけ回したのか?」 マリコルヌのその言葉に収まりつつあった笑い声が再び広がる。 ルイズは黙ったまま僅かに唸り声のような声をあげるのみ。 言い返す言葉も無いというよりも、そもそも気力が無い。 コントラクト・サーヴァントの最中にも顔を舐められ、使い魔同様彼女も心身ともに疲れきっていた。 「ふむ、どうやらコントラクト・サーヴァントは無事終了したようですな」 抱きかかえた使い魔の前足をひょいと掴み、コルベールが刻まれたルーンを確認する。 これで最大の不安要素であったルイズを含め生徒全員、使い魔の召喚は終了した。 無事に終わった事に胸を撫で下ろし、始祖ブリミルに感謝を捧げる。 しかし、授業の時間も(主にルイズと使い魔の追いかけっこの所為で)押している。 まだ生徒達の悪乗りも覚めやらないが、ここで威厳を見せねば教師ではない。 「さぁ皆さん、教室に戻りますぞ!」 ぱんぱんと手を叩く音に合わせて返事をした生徒達が次々と空を舞う。 残されるルイズとその使い魔。 彼女は魔法が使えない。なら歩いて教室に戻るしかないのだが今の様子では厳しいだろう。 疲労困憊の彼女達にコルベールは手を貸そうとしたが、ルイズはそれを丁重に断る。 自分だけ特別扱いを受ける訳にはいかない、それが理由だった。 己に厳しくあろうとする彼女らしい発言だ。 “ここで手を貸せば彼女の誇りが傷つく” そう判断したコルベールは『遅刻はしないように』と付け加えて去って行った。 「いい? ちゃんと付いてくるのよ」 使い魔をその場に置いてルイズは歩き出す。 だが数歩歩いたところで立ち止まった。 後ろから使い魔が付いてくる気配が無かったのだ。 振り返ると、置いた場所で横たわる使い魔の姿。 しかも、寝息を立て完全に睡魔に身を委ねていた。 「ちょっと! なに寝てるのよ!?」 戻って身体を揺さぶってみても起きる気配は無い。 そうなってしまうのも無理もない。 命懸けの逃走で疲弊した上に、残った体力も今ので使い果たしたのだ。 身体を動かしていた緊張の糸は完全に途切れ、彼は母親に抱かれた赤子のような安心感に包まれていた。 自分を置いてすやすや寝入ってしまった使い魔を見て、ルイズは呆れ果てた。 ルイズに彼の心境は分からない。だから『遊ぶだけ遊んで疲れたから寝てしまった』と思っていた。 「起きないと置いていくわよ? いいの? ホントに置いていくんだからっ!」 叫んだところで意味は無い。使い魔の意識は既に夢の中だ。 返答さえしない使い魔に怒りが込み上げてくる。 こっちだって疲れてるのに、抱っこして運ぶなんて冗談じゃない。 第一、疲れている理由だってアンタのせいだし。 それにご主人様の言う事、ちっとも聞かないし。 でも、外に出して風邪でも引かれたら困るのは私だし、使い魔の管理も主の仕事……よね。 彼女は心の中でそう愚痴りながら、振り返らずに教室へと歩む。 その小さな腕の中に自らの使い魔を抱えたまま…… 「ふぅ……前途多難だわ」 馬小屋から貰ってきた藁の上に使い魔を寝かせ、自分もベッドに横になる。 大きく分けて使い魔には三つの役割がある。 一つ、使い魔には主人の目となり耳となる。 その為の能力が使い魔には与えられる……筈なんだけど、何故か私には出来ない。 二つ、主人の求める物(主に秘薬など)を見つけてくる。 これは犬なんだから出来そうな気はするんだけど本人にやる気があるかどうか。 三つ、使い魔は主人の身を敵から守る。 ……アイツが勝てるような敵って何よ? 野良猫? 害虫? 溜息が洩れる。 主人に手間ばかり掛けて出来る事はゼロの駄犬。 『ゼロのルイズ』に『ゼロの使い魔』。 いいコンビだと『風邪っぴき』のマリコルヌならそう囃し立てるだろう。 ……ダメ、諦めちゃダメよルイズ。 今できる事がゼロなら、これから一つずつ覚えていけばいいじゃない。 そうだわ。明日から徹底的に訓練して名犬にすればいい。 小姉さまが犬に芸を教える姿を私は見ている。 それを真似すれば私にだって出来るはず! “使い魔を名犬に育てる” 固い誓いを胸に毛布の中に潜り込み、睡眠を取って明日に備える。 真似をするついでに胸も大きくならないかなぁ、と無茶な妄想と共に瞼を閉じた。 「いい? ちゃんと取ってくるのよ」 使い魔の前で木の棒を振り気を引いたところで遠くに放り投げる。 果たして取りにいくのか、あるいは棒を咥えたまま戻ってこないかもしれない。 そんな心配を余所に、使い魔は一目散に駆け出しそれを咥えて戻って来た。 「やればできるじゃないっ!」 心から溢れだす満面の笑み。 嬉しくなって使い魔の頭を撫でる。 ルイズにとっては訓練でも、彼にとっては遊びだった。 だから何故ルイズが喜んでいるのかは分からなかったが、 それでも今のルイズの笑顔は嫌いではなかった。 ……いや、むしろ好きだった。 あの笑顔があれば、いつまで続けても飽きる事はないだろう。 「見ろよ。ルイズのヤツ、使い魔と遊んでるぜ」 「いい気なもんだよな。名門貴族だからって」 早朝から始められた訓練も、周りから見れば遊びだった。 主と使い魔は一心同体。 今、彼女たちがやっている遊戯など誰でも出来る。 この光景は『ルイズの使い魔はそんな事もできないのか』と評価を貶めるだけ。 それでも彼女達は構わない。周りの評価などどうでもいい。 どんなに惨めでも必死に足掻く姿を恥じる必要などない。 その真意を理解できる者は多くはない。 数少ない彼女の理解者が彼女に声を掛ける。 「面白そうな事してるじゃない。ルイズ」 「何の用? 私、こう見えて忙しいんだけど」 「私には遊んでるようにしか見えないんだけど。で、これを投げればいいの?」 「ふん。アンタが投げたって取りになんていかな……何で取りに行ってんのよアンタ!」 突然の主人の激昂に驚き、咥えた棒を取り落とす。 ヴァリエール家とツェルプストー家の長きに渡る因縁を召喚されたばかりの犬に理解しろとは無理な話だ。 使い魔は理不尽な怒りに脅えるばかり。 それをキュルケが、よしよしと頭を撫で落ち着かせる。 ……傍から見れば、どちらが飼い主か分からない構図だ。 「授業」 そんな二人の間にタバサが割って入る。 見れば、他の生徒達もちらほらと教室に向かっている様子が窺える。 「よし、じゃあ訓練はここまで。私達も教室に行くわよ」 「はいはい」 教室に向かう三人を見送り、彼は辺りを見回す。 まだ、ここへ来て二日。世界は果てしなく広い。 他に何があるのか、期待に胸を膨らませて冒険に旅立つ…! 「アンタも来るのよ!」 走り出そうとした矢先、首根っこをあっさりと掴まれ主人に引っ立てられる。 ざんねん!! 彼の冒険は、ここでおわってしまった!! 「このように魔法は四大系統に分かれており…」 ぴすぴすと鼻を鳴らしながら抗議するバカ犬を無視して羽ペンを走らせる。 どうやら訓練が終わったら遊びに行けると思っていたらしく不機嫌この上ない。 しかし授業を邪魔する様子もないし、このまま放置しておこうと決めた直後。 「では貴方、そこの貴方」 呼びかけられた声に気付き、顔を上げる。 壇上で新任のミセス・シュヴルーズが私を指している。 「お名前は?」 「ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです」 「ではミス・ルイズ。錬金でこの石を金属に変えてください」 錬金の実演に壇上へと向かう私にクラスメイト達の怯えた視線が集まる。 引き止めるキュルケを無視し壇上へと立つ。 ある者は机の下に隠れ、ある者は少しでも離れようと席の端に移動し、 そして、ある者はそそくさと教室から退出……ってタバサじゃないっ! いいわ、見ていなさい。 昨日までの私とは違うんだから。 使い魔がちょっとアレだけど、サモン・サーヴァントには成功している。 だからもうゼロじゃない。 出来る。出来ると信じれば必ず出来る……! 正直微妙な成功に裏づけされた彼女の自信。 それが彼女の力を最大限にまで引き出す。 ……そして。 周囲に響き渡る爆発音。 天井から降り注ぐ破片に、逃げ惑う生徒達の絶叫。 我先にと逃げ出す生徒達がひしめき合い出口は騒然となる。 使い魔達も飛べるものは皆、窓から逃げ出した。 この場に残っているのは、ルイズを含めた生徒数名と気絶したミセス・シュヴルーズだけ。 それと、何が起こったのか分かってない犬が一匹。 「だから言ったのに! 余計ひどくなってるじゃない!」 「うるさいわねっ! ちょっと失敗しただけでしょ!」 「……まぁ破壊力が上がったって意味では上達したとも言えるかもね」 言い争う二人の間にギーシュが茶々を入れるが完全に蚊帳の外。 睨み合う互いの目から凄まじい電流が飛び散り他の物など視界に入っていないのだ。 出来れば三人に早々に避難してもらいたいのだが、そうもいかないらしい。 かといって女性より先に逃げるのは自分の誇りが傷つく。 やれやれ、と同じくアウト・オブ・眼中仲間の犬と視線を合わせる。 “なるほど。忠誠心は人一倍あるのか” 誰もが口を揃えて駄犬と言うが、どうやらそうでもないらしい。 先の爆発騒ぎで主人より先に逃げる使い魔もいたが、この犬は違うらしい。 ルイズがこの場から離れない以上、逃げるつもりもない。 随分と勇敢な使い魔だ、とギーシュはそう評価した。 ……本人に何が起きたか分からずに、きょとんとしているだけなのだが。 ふとギーシュの脳裏に違和感が走った。 ……いつもより大きな爆音。 それを聞いた生徒達は一目散に逃げ出した。 だが、音に比べて被害があまりにも少なすぎる。 再び降り注ぐ破片。 ギーシュと彼が同時に頭上を見上げる。 瞬間、驚愕に言葉を失った。 ……亀裂の走った天井。 降り注ぐ破片は爆風に巻き上げられたものではない。 今も微かな悲鳴を上げる天井、その瓦礫。 爆発はここではない、上で起きたのだ。 自重により崩落の危険はさらに加速していく。 次々と広がっていく亀裂の下には白熱する二人。 「二人ともケンカを止めるんだッ! そこは危……」 「ギーシュ! アンタはすっこんでなさいっ!」 必死の呼び掛けも一喝され届かない。 仕方ない。レビテーションで無理矢理にでも! ギーシュのその判断よりも早く使い魔は主の元へ駆ける。 壇上へと上り、その場から引き離そうとローブを噛んで力の限り引っ張る。 「ちょっと何するのよ! 離しなさい!」 だが、その行動も理解されなければ無意味。 そして理解した時には遅すぎた。 一際大きな破砕音に全員の視線が頭上に集中する。 刹那、堰を切ったように煉瓦の雨が二人に降り注いだ。 悲鳴と共に二人の姿が砂煙に消えていく。 その光景にギーシュの身体が凍りつく。 二人が飲み込まれるのを黙って見過ごすつもりはなかった。 だが動けなかった。突発的な事故に反応など出来る筈がない。 それでも助けるぐらいの事は出来たんじゃないのか、と唇を強く噛んだ。 「大丈夫」 後悔するギーシュの横をタバサが通り抜ける。 軽く振り上げられた彼女の杖。 立ち込める砂煙がそれに合わせるように払われていく。 開けた視界に浮かぶ二人の無事な姿。 その周囲には二人を避けるようにして煉瓦が散らばっている。 「……死ぬかと思ったわ。ありがとタバサ」 「どういたしまして」 生きるか死ぬかという瀬戸際にあったにも関わらず平然と挨拶を交わす二人。 拍子抜けしてしまうような光景だが、自分には真似出来ない。 真似できないのは度胸だけじゃない。 咄嗟に反応し最善の魔法を選択した判断力。 ただ無口で根暗な少女ぐらいにしか思っていなかったが、 彼女はこういった危機的状況に直面した事があるのだろう。 ……いや、そうであってほしい。 そうでなかったら男としての面目が立たない。 「全くひどい目にあったわ」 「アンタのせいでしょ! アンタの!」 同じく瓦礫を除けながら立ち上がるルイズをキュルケが責め立てる。 無事で何よりだが、元気が有り余ってるのはどうかと思う。 それにしても…… 「凄いな。君の風の魔法は」 「あっちは違う」 「へ?」 返答の意味を理解できずにギーシュが立ち止まる。 それだけ告げるとと少女はさっさとこの場を立ち去ってしまった。 ギーシュに説明できないのも無理はない。 タバサ自身、何が起きたのか分からないのだ。 あの時、確かに旋風の守りで二人を守ろうとした。 一人ならまだしも二人とも守りきれるかは不安だった。 だが、ルイズに届いた煉瓦は一つとしてなかった。 そして彼女の周りに落ちている物を見て驚愕した。 氷のように溶け落ちた天井の残骸。 ルイズの魔法ではない。 キュルケの炎でも降り注ぐ煉瓦を一瞬で溶かすなど不可能だ。 残された可能性は唯一つ。 彼女の脳裏に浮かんだのは、ルイズのローブを噛んだまま眠ってしまった一匹の犬の姿だった…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/478.html
「私の生み出した『バオー』よ、もう間に合わん…爆発はここまで来る… フフフフ…わしとお前が死ねば…ドレスの研究も終わりだ…」 鍾乳石が突き刺さった老人が、血を吐きながら言葉を発する。 5 4 3 その後ろでカウントダウンの声が響いている。 「この神秘的な洞窟こそわしらの墓場に相応しかろう!」 2 さらばバオー! さらば少年よ! 1 0(ゼロ)!! 辺りが光に包まれ、それと同時に洞窟が崩れていき、凄まじい勢いで水が打ち寄せてくるのを感じる。 意識が遠くなっていく、おそらくこのまま自分は死ぬのだろう。 スミレは無事逃げ出してくれたのだろうか? そう考えた次の瞬間、彼の意識は閉ざされた。 そして次に彼が目を開けた時、ピンク色の髪をした少女に唇を奪われていた。 な、なにをするだァーッ! 混乱のあまりそう叫びそうになるが、突如焼け付くような痛みを感じ、彼はうずくまった。 「くっ、これは!?い、いけない!」 痛みそのものではなく、それがもたらす『変化』を恐れ、思わずそう叫ぶ。 「だ、大丈夫よ、『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから」 いきなり彼が目を覚ました事に驚いたのか、彼のただならぬ雰囲気を察したのか、 先程の少女が恐る恐る彼に話しかける。そしてその言葉通り、程なく痛みは治まった。 何とか平静さを取り戻した彼がまず最初に考えたのは、自分はドレス、またはそれと同じような組織によって 助けられた、いや、モルモットとして捕らえられたのではないか?という事であった。 辺りを見回してみると、奇妙な生物が何匹かいる、漫画やゲームのモンスターそっくりな生き物達。尋常ではない。 だが、次の瞬間疑問も沸き起こる。周りにいる人間の服装の奇抜さにである。 もし彼らが研究員なら、白衣を身に着けているだろうし、自分を警戒しての戦闘員にも見えない。 そもそも自分が何であるかを知っていれば、開け放たれた外で目覚めさせる事などしないだろう。 (それにしても…) どうにも周りの人間は、自分を、いや自分の横にいる少女を嘲笑っているような感じである。 「これがッ!これがッ!これがゼロのルイズだッ!」 「な、何てことだ!一日一日、ゼロのルイズは確実に進化しているんだ!」 マイナス…ルイズはあと数日でマイナスになるぞ!お、おそろしい!」 等という言葉も聞こえ、ますます状況がわからなくなる。 彼女は機嫌が悪かった。 ご機嫌斜めだった。 それもそうである、初めて魔法に、しかも一生を左右するサモン・サーヴァントに成功したと思ったら、 平民が召喚されてしまったのである。 しかもその平民に、貴族である自分のファーストキスを捧げてしまったという現実! あと、いきなり起き上がったその平民に、そう平民にちょっとビビってしまったという事も。 メルヘンだッ! ファンタジーだッ! こんな体験できる奴は他にいねーッ! 等とポジティブに考える事など出来よう筈もない。 教官のミスタ・コルベールがルーンを見て珍しいなどと言うものだから、ちょっと期待したが、 あとは特に何を言うという事もなかった。 「はぁ…なんで私が平民なんかを…」 飛行魔法で校舎に戻っていく教官と級友を見送りながら、ルイズはため息をついた。 「君、これはいったい!?あの人たちは!?」 何かを叫んでいる自分の使い魔…認めなければならないだろう、『自分の使い魔』にむかって口を開く。 「あんた、名前は?」 「え?」 「だから名前はなんて言うのよ!?」 貴族の質問にさっさと答えないとは、どうやら頭の回転も悪いらしい…と、益々憂鬱になる。 「育郎…橋沢育郎…」 困った顔でそう自分の名を告げる平民を見て、彼女は「変な名前」と思いながら、再びため息をつくのであった。 しかし彼女はまだ気付いていない、『彼ら』が最強の生命力を持った使い魔であることを! 「なんだかものすごく嫌な予感がするわ…」 一方そのころ、超能力ではなく女の勘で、橋沢育郎が助けた少女スミレは、人知れず不機嫌になっていた。 To be continued…… 戻る
https://w.atwiki.jp/kurokage136/pages/105.html
注意!!この話はMM逃走中 もう1つのゼロワン編の後日談であり、他者の二次創作ダンガンロンパアナザー2のネタバレが含まれております! カキコだと多数の目に留まるのでwikiに載せることにしました。 全てが終わったゼロワン世界。 だが、解決してない問題がまだ1つ‥‥‥‥ これは1人のどこにでもいる乙女が成長した、その代償の物語。 エピソード episode1 成長と変化の末に episode2 掴み取った幸福 episode3 壊れたマリオネット episode4 hunting Wolf episode5 狂喜と恐怖はすぐ側に episode6 悪魔が殺意を抱いた時 episode7 途切れないココロ episode8 夢ウサギVS呪グモ episode9 やっぱりあたしは絶対負けない仮面ライダー Final episode ゼロからワンへ あとがき